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制作秘話

井戸茶碗の制作秘法を公開  私は萩焼制作に手を染めて、早いもので三十数年が経ってしまいました。
その間、井戸茶碗制作にほとんどの努力を傾けてまいりました。
しかし思わしい結果を得るまでにはいたっておりません。と言うと無駄なときを費やしたように聞こえるかもしれませんが、ひそかにそれなりの手法は会得できたと思っています。
そこで今回はその努力の跡を公開し、私の及ばないところを引き継いで参考にしていただくと同時に、、アドバイスでもいただければと願う次第です。  
秘法と申しましても、おそらく何だこれしきのことと思われること必定と思っておりますが、思わぬ簡単な作業の中に秘密が隠されているのです。
 私がまず着目したのは、井戸茶碗の枇杷釉です。あの梅花皮を見ると鉄分を含んだ着色釉ではありません。では、なぜ枇杷釉と言うのでしょうか。
私の考えでは化粧土が釉と一体化することで、枇杷色の着色釉に見えるだけのことと思うのです。
基本的には粉引手法と違わないのです。
 さて、化粧土と釉薬については、その質の選別が大切であることは当然ですが、胎土との相性がポイントになります。
ここのところは試行錯誤が大変ですが、繰り返しテストすべきところでしょう。
やはり最大の留意点は作業の順番とタイミングにあると思うのです。
成形したものに、どう対処していくか。ヒント、その一。まず素焼きです。どのくらいの温度で焼くか。これは重要な留意点です。
極力低温である必要があるようです。
化粧土、ここではすでに下釉と解釈しておくべきでしょうが、
胎土になじませるためには浅い素焼きがよいようです。
次は施釉ですが、ヒント、その二。タイミングの取り方がすべてです。
化粧土がどの程度水分が切れたときを選ぶか、胎土、化粧土、釉薬すべてを手中のものとして自分の体で覚えこんでいくしかありません。
ヒント、その三。化粧土と釉薬の中に灰汁(あく)の成分を存在させることも忘れてはなりません。
この灰汁というものは非常に厄介なものです。
何から取り出したものが一番いいかとなりますと、これも一概には言えませんが、貝を焼いたものが一番でしょう。
と言って何の貝でもと言うわけではありません。
またどのくらいの温度で焼くかですが、本焼き温度では灰汁まで焼ききれるようです。
元来、木灰に含まれている灰汁をそのまま残して使用することは、上策ではないようです。
簡単ですが、井戸茶碗の制作のヒントになればと思っております。
伝来の井戸茶碗が、各碗各相で、それぞれ特徴あるのは、たとえ一回の窯で同時に焼いても、ちょっとした作業タイミングの違いが、大きい差となって出てくるのではないかと思っております。
井戸茶碗こそ自分スタイルを生み出す、恰好の素材であると思います。
何かのお役に立てば、喜びこれに過ぎるものはございません。