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窯仕事あれこれ

窯仕事で一番大切なことは、作品作りの緊張を迷いなく持続することです。土作りに入るとき、目標とする作品の計画を立てるわけですが、窯に火を入れ最後の仕上げをするまでの二三ヶ月、気持ちに揺らぎがあってはいけないのです。

途中で気が変わったりすると、おおむね失敗の元となります。これは簡単なようで案外と難しいことなのです。

本来、焼物仕事と言うものは気長に構えていかないといい仕事は出来ません。かといって、のんびり屋でも駄目なのです。私はちょっとのんび


り屋のところがあるのでそういった点は不向きな面もあると思っておりますが、焼物仕事が人一倍好きであると自認することでカバーしております。 酒好きが飲み屋をやると失敗が多いと言われますが、私にとってはいい教訓としております。 長い目で取り組まなければならないお話を二、三いたしますと、まず燃料の薪ですが山から出して最低でも一年近くは乾燥に時間がかかります。いざ窯の火入れとなってあわてても追いつきません。釉薬に使う木灰のアク抜きもそうです。何ヶ月もかけて、根気強く水を取り替えてアク抜きをしておかなければ、今日明日と言うわけにはいかないのです。  焼物仕事としてよく目にするのは、楽しいような緊張するような轆轤仕事や窯焚き風景ですが、仕事の真の正念場は意外と隠されたところにあるのです。そういったことが、陶工の偏屈者を生み出す原因かもしれません。でも私にとって焼物仕事は生涯の宝とも言うべき仕事なのです。